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内科医を始めとする医師の大量退職により、病棟の一部廃止、患者数の減少など診療収益が激減し、平成18年度決算において不良債務の発生、さらには平成19年度待つには10億円程度の不良債務が見込まれており、病院再建が急務とされております。今回「江別市立病院経営健全化計画」が示され、一定方向の改革指針が示されました。まずはこの計画の概要を説明いたします。
(これまでの再建策への動き)
平成18年11月 有識者からなる「江別市立病院あり方検討委員会」に諮問
平成19年2月 「江別市立病院あり方検討委員会」の答申
平成19年5月 病院職員による「院内プロジェクトチーム」からの提言
平成19年9月 課題別検討チームにより提言の細部がまとめられる
平成19年12月 総務省が「公立病院改革ガイドライン」を示す
平成20年2月 具体的な行動指針として「江別市立病院経営健全化計画」作成
(計画の期間)
計画上は5ヵ年の見通しを立てているが、医療及び経営環境が流動的なため、計画期間は平成20年度から平成22年度とし、平成23年度から平成24年度を参考期間としている。
(どのように実効性をはかるか)
目標に対する進行管理を徹底するとともに、病院経営に知見を有する外部の有識者の評価を取り入れながら計画を推進する。
(基本目標)
基本目標として、(1)医療体制の整備、(2)医療の質と信頼の向上、(3)地域医療支援の充実、(4)経営状況の改善、の4点を挙げ、それぞれの具体策を記しております。またそれぞれに目標年度を設定しており、計画的に進めていくとしております。うち太字で記載しているものは20年度中に行うもの、特に記載のないものは全期間を組織的に行うとするものです。
(1)医療体制の整備
この項目では、まず「診療体制の整備」を目標とし、現在江別市立病院再建の柱ともされている「総合内科」の強化(H20・総合内科医2名確保)がうたわれております。さらに専門的な医療の強化により「消化器病センター」の立ち上げ(H21)、循環器内科の再構築(H21)、産婦人科医確保と小児科医との連携による「女性医療センター」の立ち上げ(H21)をそれぞれ目指すことが示されています。また日中、夜間を通じた内科系救急患者(二次救急)受入れ拡大(H21)も目標とされています。この体制の整備には、総合内科医、産婦人科医の確保が必要とされています。
つぎに「医療スタッフの確保」に関わる目標として、外科、耳鼻咽喉科の医師の確保(H22)、前期・後期の研修医の確保(全期間取組)、病棟再開に向けた看護師等の確保(H22)に努めるとされております。
現在の医師不足の現状のなかで如何に医師を確保するのかが問われることになります。医師の確保と特色のある医療体制の整備をきちんと行うことが、研修医の確保に繋がることは、他病院の事例を見ても明らかな事です。現在の市立病院では「総合内科」への関心が、研修医の中にもあると聞きます。また消化器センターや女性医療センターの構想も、特色のある医療体制の整備にも市民への医療環境向上にも役立つことであると考えます。
(2)医療の質と信頼の向上
このことは当然問われるものであります。職員意識の啓発、診療情報の開示・提供・保護、待ち時間の縮減や接遇の向上、医療費のクレジットカード支払い導入(H20)、路線バス構内乗り入れ(H20、)医療安全教育、院内感染予防などの医療安全管理の徹底、に加え、質の高い医療の提供のために病院機能評価の取得(H20より取組・H24受審)、緩和ケアチームの立ち上げ(H20)、高度医療機器の計画的整備による体制の保持増進などが目標とされております。
(3)地域医療支援の充実
地域の病院・診療所との連携、紹介患者や検査依頼の受入れの拡充と受入れ後の情報発信の徹底により連携の流れの円滑化、小児科においては市内外の医療機関との関係強化、訪問・在宅医療の推進、病院情報発信や健康セミナーなどによるPR強化、他病院への医師派遣協力などの広域的な地域医療貢献を図ることを目標としております。
(4)経営状況の改善
収支の改善を図る為に、休止病棟の再開と病床利用率の向上、各種検診などの推進、収益性の高い事業の推進、業務の一部外部委託によるコスト削減とサービス向上(H20)、職員・組織の見直し(H20をスタート)、人件費の適正化、職員のコスト意識徹底、未収金対策強化(H24に過年度分30%を目指す)、計画の進行管理の徹底をあげています。さらに運営の補完をすべく、女性医師や看護婦などの確保と離職防止の為の24時間院内保育の運営(H20)、医師サポート体制の構築、施設整備の安定稼動と利便性の向上を目標として掲げています。
(財政計画)
これらの改革を通じて、現在不良債務が発生している現状を改善していき、経営の改善を図るとしています。数値目標としては、H20年度より病床利用率70%をクリアーさせること、医業収支をH22年度までに均等化を図り、H24に債務超過を解消するという計画を立てております。そのために、H20年度のみ発行が許されている公立病院特例債を9億9980万円発行し、H19年度までの不良債務を一時解消させるという手段をとることになっております。この公立病院特例債は、償還期間は7年とし、不良債務を長期債務に振り返ることで、「連結実質赤字比率」を下げる効果があるとともに、利子の支払いを特別交付税で補填すると規定された、病院改革の為の財政支援の施策でありますが、一方では改革プランの作成と黒字化実現が求められるものであり、この計画がこれまでのような机上の空論で済ますわけに行かないことを示しております。
(雑感)
江別市立病院の問題は、市民の健康と生命を守るべき地域医療の問題と共に江別市の財政問題への影響を含めて考えていかねばなりません。現在国では経営に多大なる影響をもたらす医療費削減(このことは介護福祉の体制にまで影響します)とともに、公立病院改革ガイドラインに見られる自治体病院の経営見直しと地域医療体制の再編、さらには医師不足と経営体制の両面より病院配置の見直しが進められております。ご覧になられた方も多いとは思いますが、2月28日のHBCのhanaテレビで江別市立病院が再生した病院として取り上げられておりました。このことは実にありがたいことでもあり、これまでの改革への活動には敬意を表します。現在、江別市立病院の総合内科は職場環境も良く力を発揮できる場であるとの医師間での口コミも広がっていると聞きました。このことがさらなる医師の確保に繋がっているとも。しかし今尚市立病院には課題は山積し、また厳しい環境に直面しているのは事実です。テレビの中で、総合ー専門の連携を自治体単位で行うのが、現在の医師不足への対処法だとの報道もされておりました。これこそ国や道の進める病院再配置の計画の基本であり、この流れは現在さらに強くなっていくことが予想されます。医師増員の対策として大学定員増や奨学金による地方勤務義務などの手法がとられていますが、医師として活躍できることには、公立病院改革ガイドラインに基づく自治体病院の縮減や再配置などの改革は、一通りの目処が付いていることと考えます。
先ずは改革の計画を進めることを後押ししつつ、その計画を進めるためには何が不足か、市・病院の組織は、あるいは進行していく中で見直すべき計画はいかなるものかを見定めていくことが必要となります。